無目的書庫

駆け出しスポーツライターの書置場です。

Phantom Pain of PRIDE

発表カードがどうにも心に刺さらなかったり、
なんやかんや迷っていたが、『RIZIN』地上波観戦をした結果、
色々思うことがフツフツと湧いてきた。

 

 


今回の年末格闘技イベントは、今までと若干変則的で
『RIZIN(ライジン)』は、
本日29日の「SARABA(さらば)の宴」と
大晦日の「IZA(いざ)の舞」の2日間で試合を開催するというもの。

 

 


その中で、今日開催された『SARABAの宴』は
8年前にその幕を下ろしたMMAイベント『PRIDE』をしっかりとケジメをつける。
これまでの日本格闘技の歴史に区切りをつける1日というコンセプトがあったわけである。

試合結果は公式サイト(http://www.rizinff.com/saraba/)を見ていただくとして、
かつて中学高校時代に、PRIDE末期からDREAM終焉までを追いかけていた
イチMMAファンとして思うことがあったので文を起こしてみた。

 

 


オープニングの演出で、Rage Against The Machine'sのGuerrilla Radioで選手が入場、
DREAMを振り返る音楽が流れたと思えば、
まさかまさかのPRIDEの公式テーマソングと和太鼓。
どうやってUFCとの権利関係をクリアしたのかが、非常に気にかかるサプライズ開幕。
ここらへんで、懐古心大爆発の自分は「あれ、案外アリじゃね?」と考えていた。

 

 

 


カード全体の印象は、かつてのPRIDEの平常興行カードという感じ。
オープニングを飾った高阪剛選手は本当にカッコ良かった。
ラグビー日本代表の件も重なり、世界のTKは健在であった。

 

 

個人的には、所英男vs才賀紀左衛門はなかなか見応えがあった。
かくいう自分は、所英男選手のかねてからの大ファンで、
『RIZIN』を観ようと思ったのも彼が出場することになったからであった。


演出面でも、わざわざフジテレビで所選手を「TBSが産んだスター」というキャッチコピーで紹介するあたりに、佐藤大輔氏の「煽りV」の真骨頂が出ていたのは流石である。


試合内容は、元々K-1ファイターで打撃専門の才賀選手が、
予想以上にMMAに適応しており、
ファイトスタイルは往年のミルコを髣髴とさせる雰囲気すらあった。
気づけば、SNSで大炎上していた才賀選手嫁の応援のやかましさで、
高クオリティの内容がかき消されたのは本当に残念。

 

 

 

 

 

 

本題は、ここからである。
メインを飾ったのは、桜庭和志vs青木真也
90年代後半からゼロ年代初頭にかけて日本のスターであった桜庭和志
かたやPRIDE崩壊後からDREAMまでのゼロ年代後半を牽引した青木真也


PRIDEの最終回としてはこの上ないカードであった。


佐藤大輔氏の「煽りV」からの、
ウルフルズの『バカサバイバー』からの、
小室哲哉の『SPEED TK RE-MIX』と演出面も全てが揃っていた。

 

 

 

 

 


問題は結末であった。


今の時代、何かしらの救いを求めて娯楽を求める中で、
このコンテンツが生きていけるとは思えない結末であったのだ。


煽りVの中で、青木選手が話していた言葉。

 

「やっぱ、どこまで行っても愛なのさ。愛なんだよ。だって、MMAってスポーツは裏切られるんだから。新日本プロレスはハッピーエンドで帰してくれる。ハッピーエンドで帰れないんだよ。泣いて帰るんだから、ファンが。」 



これに、かつて雑誌『kamipro』で紹介されていた、
「圧倒的現実」というPRIDEを象徴するキーワードが絡まり、
いよいよ自分はこのコンテンツに恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

 

そして、この興行。
何一つとして時計の針が動いていなかったのだ。
極めつけは、青木選手が五味隆典選手との来年の対戦をマイクで要望した点である。

 

「桜庭さん、本当にありがとうございました。まだ僕、桜庭さんの代わりになれないです。
だからまだ桜庭さんの試合が見たいので、引退しないでください。
またグラップリングよろしくお願いします。
おい社長、俺、このリングでまだやることあるの分かってるよな。
このリングで来年、青木vs五味やらなきゃダメだよな。押忍」

 


自分「いや、違うだろ。」


地上波で何がしたいんだと思ってしまった。
まだそんなPRIDEの幻想を引きずるのかと。
ケジメをつけるんじゃねえのかと。

 

 

 

 


結局明らかになったのは、
今現在におけるメイド・イン・ジャパンのMMA興行の限界であったのだ。


自分は今でもMMAが好きだし、PRIDEもDREAMも大好きである。
しかし、それに頼り続けても生まれるモノは何もない。
PRIDEの幻影を振り払い、10年、20年かかろうともUFCと双璧を成す、
新たなメイド・イン・ジャパンMMAの文化を作るべきなのでは無いだろうか。


いきなり、地上波に行かなくてもいいじゃないですか。
MMAに負け、地に落ちた新日本プロレスは企業努力で這い上がり新たな文化を構築した。
『RIZIN』にはチャンスが有る。
大晦日も含めて、今後の興行で未来につながるMMA文化を作って欲しい。

 

 

 

 

 


最後に一連の『RIZIN』タイムラインで、一番心に残ったツイートを紹介します。